「相続登記の義務化」から1年、相続・贈与された土地の名義変更をしていない人はどれくらいいる?
◎親の土地は生前贈与と相続どちらが得なんだろう
土地を贈与で取得する場合、贈与税は非課税ですが、固定資産税の評価額に対して不動産所得税3%と登録免許税2%を支払ってから名義変更をすることになります。一方、相続で取得する場合は、不動産所得税は免除、登録免許税も0.4%で済むため、相続で名義変更した方がお得です。
しかし、相続時精算課税制度を使って土地を贈与すると、贈与税は累計2,500万円まで非課税ですが、相続税はかかります。相続時精算課税制度は、贈与者が亡くなった時にその土地の贈与時の価額と相続する土地の価額とを合計した金額から精算して課税される制度のため、相続税は安くなりません。従って贈与税は節税になりますが、相続税の節税にはなりません。
親から子へ土地を譲る場合、生前贈与と相続どちらがお得なのかは、親の持っている財産額によって変わりますが、相続財産が多いお金持ちの方は、生前贈与を検討したほうがよろしいかと思います。相続税は、「基礎控除3,000万円+(相続人数×600万円)」までなら非課税になるため、一般的には相続が良いでしょう。
◎相続登記の義務化
不動産を所有している人が亡くなり、その不動産を取得した相続人の名義に変更することを「相続登記」と言い、2024年4月1日より義務化されました。登記は、不動産の所有者や担保権などの不動産情報を記録することで、申請手続きは法務局で行い、登録された情報は誰でも閲覧できます。この情報が登記事項証明書、俗に言う登記簿です。不動産を売買する際は、契約書に記載されている不動産情報、所有者、抵当権の有無などの確認に登記簿が必要となります。
不動産の名義変更が義務化される前までは、名義変更は新しい所有者の自由でした。そのため、他人の不動産を買った人は所有者を自分の名義に変えますが、親から不動産を相続したら、面倒だし費用もかかりメリットがないからと登記せずほったらかしにしてしまう人が少なくありませんでした。
その結果、相続後名義変更されていない土地がどんどん増えていってしまい、現在、日本の国土全体の約2割が所有者不明の土地になっています。所有者不明の土地は、売ることも貸すこともできないため、そのまま放っておくしかないのです。そうなると、土地は荒れ放題になり、いざという時にどうすることもできなく、厄介な問題が起こってしまいます。実際、東日本大震災の時には、所有者不明の土地が多すぎたために、復興が遅れたなどの社会問題にも発展したのです。
そこで、不動産を相続したら、相続したことを知った日から3年以内に必ず名義変更することが義務化されました。怠ると10万円以下の過料が科せられます。さらに、2026年4月1日からは、不動産の所有者の住所に変更があった場合にも変更登記の申請が義務化されます。気をつけましょう。