メガ共有」の高い壁 相続登記の義務化で顕在化 対策求める声も

2024年4月に不動産相続時の登記申請が義務化されてから1年がたちました。義務を果たさなかった場合は10万円以下の過料という規定もあり、過去に相続した不動産も義務の対象となるため、この機会に登記を申請する人が増えているという。ただ、極めて多数の相続人がいる「メガ共有」に阻まれる人も多いとみられ、対策を求める声があがっている。

相続人が膨らみ続け(メガ共有)、譲渡や売却ができない家

 某県のA氏は、2023年1月に父が亡くなり、実家の建物や土地の相続手続きを進めるなかで、同じ県内にある実家の土地や建物について、登記上の相続手続きが放置されていることを知った。実家に関する不動産の多くはなぜか登記上、母と、すでに亡くなっている母の祖父との共有になっていた。固定資産税の納税通知は、母の祖父や、亡くなったA氏の父を宛名に送られてきて、A氏納めていたという。

 登記上は、母と、母の祖父の共有になっていても、祖父はすでに亡くなっている。日本の相続の仕組みは、何か手続きをしなくても、誰かが亡くなれば、決まった関係性の「相続人」が法的に定められた「法定相続分」を自動的に相続したことになる。母の祖父は亡くなっているので、その相続人たちに相続分が受け継がれ、その受け継いだ誰かが1931年以降に亡くなっていれば、さらに次の相続が発生して相続分が細かく分割されていくことになる。

 A氏らが司法書士にも相談して調べた結果、母の祖父には子どもが11人おり、その子どもが亡くなってさらに次の相続が発生するなどして、存命の相続人はA氏をのぞいて58人いた。現実に不動産を管理しているA氏名義に登記を変更するためには、全員がA氏名義とすることに同意しなければならない。

 女性は、相続人たちに手紙を出して連絡を試みた。母の実家は山間地にあり、売却などの見通しは立ちそうにない。事情を説明し、固定資産税を払って事実上の管理を続けてきた母の名義に統一するため、それぞれの相続分を譲渡してもらえないか協力を求めた。必要となる印鑑証明の費用も添えた。

 しかし、受け取り拒否で返送されるものや、「同意しない」と言う人も。電話番号がわからない人も多くて詳しく説明することもできない。大人数による「メガ共有」なだけに、行方が分からなくなっている人もいた。

 こうした場合、合意できなければ遺産分割の調停を裁判所に申し立てるなど、司法手続きは用意されている。しかし、弁護士の費用や、多くの手間が必要になる。あとで売却できれば費用は捻出できるかもしれないが、山間地にある不動産ではそれも望み薄だ。

 登記に関わる司法書士らによると、相続登記が長くされなかったことで、こうした「メガ共有」状態になってしまい、登記が困難な事例は珍しくない。なかには名義人が100人を超えるようなケースもあるという。それでも、全員が合意しなければ、登記の名義を整理できないのが原則だ。登記だけでなく、売却や譲渡なども、「メガ共有」の全員がまとまらなければ話は進まない。その状態で災害に見舞われれば、権利の調整に手間取って家屋の取り壊しなどにも影響しかねない。

実際に受けた相談で、相続した土地建物の登録義務化があまりにも遅すぎたことによる結果が、このような時間手間をかけなければどうにもならないことが常態化している。免除規定でも設けてくれれば、対策の取りようもあるのだろうが・・・・・・・・