民泊について
民泊とは:
住宅を活用して宿泊サービスを提供する事業で、一般的に「民泊新法」と「旅館業法」のどちらかの法
律に基づいて運営されます。
行政書士の役割:
行政書士は、これらの法律に基づく申請や届出を代行し、必要な書類作成、手続き、関係機関との連絡
調整を行います。
専門知識と経験:
民泊に関する法令は複雑で、自治体によって条例も異なるため、専門知識と経験を持つ行政書士に依頼
することで、スムーズな開業が期待できます。
民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づく届出:住宅宿泊事業者届出書の作成、提出代行など。
消防法令適合通知書交付申請:消防署への申請代行。
その他:補助金申請、ビザ申請など、民泊事業に必要な関連業務。
民泊は、近年の観光需要の増加やライフスタイルの変化などにより、自宅や空き家を有効活用できる新
しいビジネスとして注目を集めており、副業として民泊を始める方も増えています。
皆さんの中にも、「使っていない期間に部屋を貸して副収入を得たい」「空き家を活用して収益を得た
い」「二拠点生活で家を空けている土日を何か活用できないか」と考えている方も多いのではないでし
ょうか。
しかし、民泊を始めるためには、旅館業との違いや住宅宿泊事業法への対応など、法的な手続きや許可
が必要になるため、正確な知識と準備が欠かせません。
民泊とは?住宅宿泊事業の概要
「民泊」とは観光客や旅行者向けにマンションの一室や戸建て住宅を一時的に提供する宿泊サービスの
1つです。正式名称は「住宅宿泊事業」といい、2018年に住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)という法律
が施行されたことで、民泊の内容や始め方などが定められるようになりました。
基本的に民泊は都道府県や物件所在地を管轄する自治体に必要書類を届け出るだけで始めることができ
ます。ただし、年間180日以内での営業に限られ、宿泊施設として最低限必要なキッチンやトイレ、浴
室等を備えていることが求められます。
収益目標やライフスタイルに応じて運営方法を選択できるのも民泊として貸し出す物件に居住しながら
一部の部屋を貸し出すことも、居住せずに住宅全体を貸し出すことも可能です。
民泊を始めるために必要な手続き
民泊(住宅宿泊事業)をスムーズに始めるには、物件選定から消防設備の整備、周辺住民への周知、そ
して自治体への届け出まで、多岐にわたるステップを踏む必要があります。ここでは、民泊の始め方に
沿って、実際に営業を開始するまでの流れを詳しく解説します。
民泊に利用する物件の選定をする
民泊の営業を行う物件や建物が決まっていない場合は物件の選定を行いましょう。駅からの距離や周辺
環境等、集客面での利便性だけでなく、民泊を行える物件の要件が揃っているかを確認することも重要
です。
広さの要件:居室は壁の内側の面積が宿泊者1名×3.3㎡以上であること
設備の要件:台所・浴室・トイレ・洗面設備が完備されていること
用途地域の制限:民泊の営業自体が制限されているエリアではないこと
営業日数の制限:条例で営業日数の制限がされていないこと
特に営業日数の制限はエリアにより異なります。エリアを管轄する自治体が条例で180日よりも少ない
日数に制限したり、平日の営業を制限(土日祝のみ営業可に)したりしている場合があるため注意しまし
ょう。
また、賃貸物件を借りて民泊を行う場合は、その物件で民泊の営業が可能か大家さんや仲介会社等に確
認しましょう。「転貸可能」と契約書に記載があっても、民泊の利用は認めないという場合もあります
のでこの点も注意が必要です。なお、分譲マンションで行う場合は管理組合に確認しましょう。
民泊の営業を行う物件や建物が決まっている場合や既に所有している物件で民泊を行う場合でも、要件
が揃っているか、民泊の営業が可能かをしっかり確認しましょう。
保健所・消防署に相談する
民泊の営業を行う物件や建物の目途が立ったら、物件の所在地を管轄する保健所と消防署に事前相談を
します。
その際、使用予定物件の住所や概要、間取り、面積等が分かるような資料を持参しましょう。賃貸物件
や分譲マンションの場合は不動産会社でもらえる住所や契約情報等がまとめられた資料(マイソク等)を
持っていくと良いでしょう。
マイソクのイメージ
保健所では法律やガイドライン、条例等を前提にその物件で民泊が可能かを相談し、物件に不足事項は
ないか、届出に必要な書類、その自治体独自の運営ルール等を確認します。各保健所で細かい内容に違
いがありますので、必ず管轄の保健所窓口で確認しましょう。
消防署では物件に必要な消防設備について相談を行います。民泊の営業を始めるためには必要な消防設
備を整備した後、管轄の消防署の検査を受けて「消防法令適合通知書」という書類を発行してもらう必
要があります。物件の構造や条件により必要な消防設備は異なる為、必ず確認しましょう。消防設備の
要件は居室の床面積が50㎡を超える場合はハードルが高く、50㎡以下の場合はハードルが低い傾向があ
ります。
保健所と消防署への事前相談の結果、検討していた物件では民泊が行えないことが判明することがあり
ますので、事前相談は物件の契約前に行うと良いでしょう。
住宅宿泊管理事業者を選定する
民泊には家主居住型と家主不在型の2種類があります。家主居住型は民泊を利用する際に家主(オーナー)
が同じ建物に滞在している形態を指します。居住しているマンションの1室を民泊として貸し出す場合
や、居住する戸建て住宅の1階を民泊として貸し出す場合等がこれに当たります。
家主不在型は民泊として利用する建物に家主が居住していない形態を指します。家主不在型で民泊の営
業を行う場合、民泊の利用中にトラブルが起こっても駆け付けたり、すぐに対応したりできないことが
多くあります。そのため、家主不在型で民泊の営業を行う場合は住宅宿泊管理事業者に管理を委託する
ことが義務付けられています。また、家主居住型であっても1物件に多数部屋がある場合は管理の委託
が必要です。
住宅宿泊管理事業者とは、国土交通大臣の登録を受けた事業者で、家主からの委託を受けて民泊利用者
への説明や鍵の管理、クレーム対応、ゴミ出しルールの告知、近隣住民とのトラブル対応等を行います
。住宅宿泊管理事業者により、手数料や法定外の業務の対応範囲、対応言語等が異なりますので、サー
ビス内容を比較して事業者を選定しましょう。
消防設備を整える
物件が確定し、事前相談で必要な要件や設備を把握したら、民泊営業を開始するために必要な修繕やリ
ノベーションと消防設備の設置・工事を行いましょう。
消防設備の整備を終えたら、管轄の消防署へ「消防用設備等設置届出書」を図面と共に提出し、消防署
の検査を受けましょう。届出の提出方法は電子申請、窓口への持参、郵送等がありますが、管轄の消防
署により対応している方法が異なる場合がありますので、ご注意ください。消防署の検査を受け不備や
不足がなければ「消防法令適合通知書」が発行されます。この「消防法令適合通知書」は民泊の届出(住
宅宿泊事業届出)を行う際に使用します。
周辺住民へ民泊の事前周知を行う
民泊の営業を始める前に事前に周辺住民へ周知を行います。周知の要否や方法は自治体によって異なる
ため、物件所在地の自治体や保健所にルールを確認しましょう。
自治体によっては届出の15日前を目途にしていたり、説明会の開催を行う必要があったりします。
必要書類を揃えて届出書を提出する
民泊の届出には届出書以外にも添付書類が求められます。自治体によっては独自の様式で作成した書類
の提出を求められる場合があります。届出に必要な書類は管轄の保健所で確認ができますので、事前相
談の際に必ず確認するようにしましょう。
★建物の居住要件とは、人が居住するための家屋であって、「現に人の生活の本拠として使用されてい
る家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供さ
れている家屋」のいずれかに該当するものです。この要件を満たしていることを証明する書類を添付書
類として提出します。
例)入居者の募集が行われている家屋→賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写しやマイソク等
届出は国土交通省が運営する民泊制度ポータルサイト又は管轄の保健所の窓口に提出します。提出後、
保健所が民泊施設の検査を行います。検査では必要な設備が整っているか、部屋の広さは十分か、衛生
的な環境が保たれているか等を確認します。
民泊の営業を始める
届出内容と検査で不備や不足がなければ、保健所から届出番号が通知されます。併せて住宅宿泊事業届
出済の標識がもらえますので、民泊物件毎に見やすい場所に標識を貼りましょう。これにより民泊の営
業が可能になります。インテリアや備品を揃え、営業を開始しましょう。
民泊営業開始後の手続き
民泊営業を始めた後は、定期的な運営報告が必要となります。
毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の偶数月の各月15日までに「宿泊させた日数」「宿泊者数」「
延べ宿泊者数」「国籍別の宿泊者数」を報告します。この報告は住宅宿泊管理事業者に管理を任せてい
たとしても家主(オーナー)の義務なので忘れずに行いましょう。
民泊を始める手順まとめ
物件選定や保健所・消防署との事前相談を経て、確実に要件をクリアする
住宅宿泊管理事業者の活用を検討し、家主不在型の民泊でのリスクを低減
消防設備の整備や周辺住民への周知など、自治体の条例ルールにしっかり対応
届出に必要な書類や添付資料をそろえ、保健所の検査で合格すれば営業開始
開業後は定期報告を忘れずに行う
民泊の始め方は一見複雑に思えるかもしれませんが、正しい手順を踏みながら進めればスムーズに開業
することができます。特に初めての方や忙しい方は、行政書士などの専門家に相談することで、申請書
類の作成や手続きを効率的に進められます。ぜひ参考にしながら、安全・安心な民泊運営をスタートし
ましょう。