離婚の財産分与で税金がかかる?マイホームを渡す際の落とし穴
日本では、3組に1組が離婚すると言われている。そのため、離婚自体は珍しいことではないが、財産分与の際に税金がかかるかどうかは気になるところですね。
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦で積み上げてきた財産だ。そのため、独身時代に形成した財産や、婚姻後であっても相続・生前贈与による財産(特有財産)は対象外となる。なお、財産分与は例外を除き、夫婦の収入等に関係なく2分の1の割合で行う。
●財産分与の対象が自宅の場合は注意
財産分与により、たとえば配偶者(夫)から現金を妻に渡した場合、通常は妻に贈与税はかからない。ただし、自宅などの不動産を妻に渡す場合は、夫は譲渡所得税の対象となるので注意が必要となります。譲渡所得税とは、土地や建物、株式などの有価証券、ゴルフ会員権などを譲渡する際にかかる税金のこと。自宅を財産分与した際の譲渡所得の金額は、次の算式により算出することができる。
譲渡所得の金額=収入金額ー(取得費 + 譲渡費用)ー特別控除額
譲渡所得税の対象となるのは、財産を譲渡した配偶者(夫)となるのだが、金銭を受け取っていないにもかかわらず、どうしてそのようなことが起きるのだろうか。また、自宅の財産分与にかかる税負担を軽減する方法はあるのだろうか。
●財産を譲渡した配偶者の財産分与義務が消滅=経済的利益と評価される
財産を譲渡した配偶者は、金銭を受け取っていないにもかかわらず、どうして譲渡所得税の対象となるのでしょうか。財産分与によって、財産を譲渡した配偶者の財産分与義務が消滅し、それ自体が財産を譲渡した配偶者の経済的利益と評価することができます。
そのため、財産を譲渡した配偶者は、分与義務相当の対価を受け取ったと評価されます。」
●自宅の財産分与は「贈与税の配偶者控除」か「譲渡所得の3,000万円の特別控除」が利用できる
自宅(居住用不動産)を財産分与する際に、税負担を軽減するために利用できる制度については、
税負担を軽減する制度として、『贈与税の配偶者控除』と『譲渡所得の3,000万円の特別控除(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)』があります。
『贈与税の配偶者控除』制度は、夫婦間における贈与が、夫の死後における妻の生活保障を意図して行われることが少なくないという実情に即応するための措置です。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除することができます。
『譲渡所得の3,000万円の特別控除』制度は、一定の居住用財産を譲渡した場合に譲渡所得から3,000万円の特別控除額を控除することができるものです。
対象は、居住用家屋または居住用家屋とその敷地となっていて、原則として家屋を有していることが必要であり、敷地だけの譲渡では原則として控除をすることはできません。
なお、配偶者や親族に対する譲渡は特例の適用外となるため、離婚後に譲渡する必要があります。」
●贈与税の配偶者控除適用で贈与税額は1,195万円。譲渡所得の特別控除の場合は?
贈与税の配偶者控除を利用した場合と、譲渡所得の特別控除を利用した場合とで、税額にどのような違いがでるのでしょうか?
【前提条件】
夫名義の自宅を妻に渡す場合(婚姻関係は20年以上)、夫婦は同居している。
不動産の時価:5,000万円、取得費:3,000万円、譲渡費用:100万円
「税額シミュレーションは、それぞれ以下のような結果となります。
<贈与税の配偶者控除を利用した場合>
5,000万円-2,000万円-110万円=2,890万円が課税価格となり、税額は1,195万円となります。
<譲渡所得の特別控除を利用した場合>
5,000万円-(取得費3,000万円+譲渡費用100万円)-3,000万円の結果が0円未満となるため、課税譲渡所得は0円となり、税額は0円となります。」
●「清算的財産分与」は贈与税の対象外だが、課税対象となるケースも
離婚に伴い自宅を財産分与する際に、税制上注意すべきポイント。
夫婦間で行ういわゆる 『清算的財産分与』は、婚姻中に築かれた共有財産を単に清算する手続きとみなされるため、基本的に贈与税はかかりません。ただし、
(1)非常に高額な分与で実質的に贈与と解される場合
(2)節税を目的とした偽装離婚と見なされる場合には、贈与税の課税対象となるおそれがあります。ご注意ください。