財産相続トラブルが激増、「一番の原因は想いの違い」

実は相続トラブルというと、お金持ちの家庭のものと思われがちですが、財産総額5000万円以下の家庭でよく起きているそうなのです。

相続トラブルは財産の少ない家庭でも起きる
調査によると、遺産分割調停の約75%が相続財産5000万円以下の案件。富裕層では相続税についてのトラブルが多いのに対し、一般家庭では遺産分割の割合や金額で争うケースが激増しています。当初は円満に解決できると思っていても、相続の話し合いが始まると予想外の展開になることも少なくない。なぜ、そのようなトラブルが起きてしまうのだろうか?

「相続トラブルの一番の原因は、当事者同士の『想い』の違いです」ということだそうです。

親と同居して介護に尽くした人は『自分が苦労したのだから多めにもらって当然』と考え、別居していた兄弟は『家に住めるだけでも得をしているのだから同じか少なめが公平』と思うなど、価値観のズレからトラブルになりやすいのです。お互いの主張を譲らないと、なかなか相続が進まないばかりか、心理的なしこりとなって、精神的につらい思いをすることになるそうです。(経験からわかるような気がします。)

相続人同士の関係性の希薄さは大きな要因です。普段から会話のない兄弟や親族ほどトラブルになりやすい。代襲相続(親が亡くなっている場合に孫が相続すること)で甥(おい)・姪(めい)が関わるケースなど、相続の場が初対面というケースも少なくありません。子どもがいない夫婦でも相続トラブルになるのです。

子どもがいない夫婦の場合、配偶者と相続順位第2位の親が相続することになります。この際、配偶者と親の仲が良好でない場合はトラブルに発展しがち、例えば、嫁姑(よめしゅうとめ)問題があった場合などには、夫の遺産を嫁と姑が取り合うことになるので、争いは激しくなる傾向があります。そして、財産が不動産の場合、泥沼化するおそれも。不動産の相続で、もめごとが起きる理由は大きく2つです。

1つは不動産の分割方法でもめること。不動産を1人だけが相続する、代償金を支払う、売却して現金分割する、など方法によって不公平さが生じます。

1つは不動産の評価方法でもめること。時価や相続税路線価など評価方法が複数あり、意見が折り合わないことがあります。

相続の問題はきちんと解決しておかないと、「あったはずの実家や財産が消えた」となるありもしないことで疑われる可能性も。主に2つの状況があります。1つは、相続人がいない場合や相続放棄をした場合。もう1つは、遺産を使い込んだり、隠したりした場合です。使い込みは預貯金が使い込まれるケースが典型だが、時には不動産が勝手に売られている事例も存在します。

◎「これで安心は大間違い!遺言書の落とし穴
 

遺産相続でトラブルを避けるために、遺言書の存在が重要だと・・・・。しかし、たとえ遺言書があっても、それがもめる原因になることもあるのです。

せっかく遺言書を残しても、法的に有効でなかったり、内容に問題があるケースは珍しくありません。例えば、自筆証書遺言で日付が『吉日』など曖昧だったり、署名が手書きでなかったりすると無効になります。また、相続人の遺留分(法定相続人に保障された最低限の相続分)を無視した内容だとトラブルの原因になります。また自筆証書遺言の場合、保管場所が明確でないと見つからないことも多いそう。

公正証書遺言なら公証役場で保管されますが、自筆証書遺言は家庭内のどこかに保管されているため、いざというときに見つからないケースも多いんです。また、明らかに配分に偏りがある遺言は遺留分を侵害することになりトラブルのもととなります。

◎遺産相続のさまざまな落とし穴。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、どうすればよいのだろうか?

まず、被相続人の生前に家族で相続について話し合い、資産目録を作成しておくことが大切です。資産目録には土地、銀行預金、株などの有価証券、住宅ローン、生命保険、自動車、貴金属類など全ての財産を記載しておくと良いでしょう。遺産の全容を透明化し、法的に有効な遺言書を作成すれば、トラブルのリスクを大きく減らせます。

子どもがいない夫婦についても、遺言書を準備することが有効。相続における公正証書遺言の重要性も強調する。もし、すでにトラブルが発生してしまった場合はどうすればいいのか?遺産相続は遺言書の内容に沿って行うか、相続人の話し合いによって行うことが可能です。しかし、その手続きが煩雑だったり、トラブルになるケースもありますので、当事務所に御相談いただければ、適切にアドバイスができると思っています。

相続争いにはなっていないが、手続きだけを専門家に任せたい場合には、用途に応じて司法書士、税理士、行政書士に依頼するのも一つの方法です。第三者だからこそ親族間のもめごとを整理・解決できるメリットはある。

◎大切なのは家族の絆を守ること

誰しもが相続トラブルに巻き込まれる可能性はあり、重要なのは普段から意識しておくこと。寄与分(相続人が被相続人の財産維持・増加に特別に貢献した場合の取り分)に関する相続トラブルを避けるためには、親(被相続人)と同居していた人は兄弟が訪れてくれたときには車代や手土産を用意したり、別居していた人は同居していた人に対し日頃から介護などをねぎらい、感謝の気持ちを表すなども必要です。(おもてなしの精神ですね。)

財産の多寡にかかわらず、家族の関係性や環境によって複雑化することもあります。大切なのは『うちは大丈夫』と過信せず、元気なうちから家族で相続について話し合う機会を持つことです。

◎相続でお金以外に失われがちなものについて警鐘を鳴らす。

相続で最も悲しいのは、お金や財産を巡って家族の絆が切れてしまうことです。遺産分割でもめた結果、兄弟が絶縁状態になったり、親族間で長年にわたって確執が続いたりするケースを数多く見てきました。(実際、以前の同僚が東日本大震災で親を亡くし、兄弟三人で相続をする際、長男と三男がドロドロ状態になったのを聞いたことがあります。)財産は取り戻せても、失った関係性を修復するのは容易ではありません。